早稲田教育評論 第37号第1号
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学校内での利用は合理的に使用し、電子製品を使って教育を行う時は原則として授業時間の で整備する。学校の教師が独自のカリキュラムに基づき、ソフトウェア・コンテンツを開発することが促されている17。 (3)ICT端末を用いた学校教育展開にあたっての人的支援体制中央政府は各地方政府に対して、各地域・学校・カリキュラム・リソース・教員・児童生徒について、情報化レベルの評価指標システム・評価方法を策定するように求めている。各地方政府では、教育情報化が、学校の基本的な運営条件として見なされており、地域・学校の評価指標に組み込まれる。各地域の教育情報化レベルは、第三者による監督・評価により総合的に審査され、進捗状況の検証と改善につなげる仕組みとなっている19。 3.学校の児童生徒におけるICT端末利用のあり方 (1)学校内での取り扱い学校内での端末の利用については、学校情報化環境下で適切に学習に用いることと児童生徒の視力等の健康を害しない範囲で使用するとされている。また、児童生徒による携帯電話やタブレットPC等の電子機器の学校内への持ち込みは禁止されている場合もあるが、学校に持ち込む場合は学校でまとめて保管する。30%を超えない範囲での利用とされている20。 (2)学校外での取り扱い新型コロナウイルスの影響もあり「休校しても学びは止めない」という方針が出され、教育部は、中国教育研究コンピュータネットワーク(CERNET)、電気通信分野の企業と協力して、教育資源と公共プラットフォームの基盤強化によるオンライン教育を促進した。国家レベルでは学習コンテンツプラットフォームとして「国家中小クラウドネットワークプラットフォーム」が公開され、感染予防教育、道徳教育、カリキュラム学習、安全教育、メンタルヘルス教育、研究教育などの幅広い分野の学習資源が提供されている。児童生徒は、パソコン、携帯電話、タブレットPC等からアクセスし、自宅学習ができるような環境が整備されている。一方で、家庭での情報端末の利用について、児童生徒(特に未就学児)の端末利用には、健康管理上の観点からの規制もある。学習目的でない利用については、 1回あたり15分制限、1日累計1時間を超過しない範囲での利用にするように指導されている21。コロナ禍によって世界的に経済が落ち込むなか、EdTech産業への需要の増加も見込まれる。中国のイノベ̶ションを進める産業として、今後もICT教育の展開が注目されていくだろう(分担執筆:李俐穎)。182OECD生徒の学習到達度調査(PISA)によると、中学校相当でのICT活用指導力があると回答した教員の割合は 87.0%(2018)と高い数値である。中国では、教員の活用能力を重視しており、中央政府及び地方政府が教員向けの研修を実施している。また、政府だけでなく、Intel、Microsoft、Lego等の民間企業や UNICEF等の国際機関と連携した研修を実施しており、体系的な研修を通じて、情報技術を活用するための教員能力の強化を図っているといえよう18。 2.学校におけるICT環境整備及び活用の効果測定方法

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