K中学校では、「学校経営方針」の重点目標の一つが、「各教科において、「わかる授業・できる授業」に向け、積極的にICT機器や図書館を利活用した学習を取り入れた指導を通して、生徒の主体的な学習態度を育成する」13である。ここからICTの活用は生徒の主体的な学習態度育成のための方法として位置づけられていることがわかる。用している。例えば、弁論大会の原稿を作成する際に、効率よく情報収集をすることを目的にタブレットPCでの情報収集を勧めている。しかし、得られた情報を頭の中で再構築して書き起こす際には、紙への手書きを指定している。タブレットPCで得られた情報を単にコピー&ペーストするのではなく、生徒自身が内容の精査や理解を経たうえで、自分の言葉にする必要があるとしている12。タブレットPCは、生徒の思考を補助するツールとして捉えられていることに注意したい。また、生徒同士の学び合いを重視しており、タブレットPCで調べた内容をグループで議論する時間を大切にしている。学校行事の際には学年横断的に小グループを作り、オンラインで作成した資料をもとに活動を行うなど、異なる学年の生徒同士の交流にもICTが活用されている。ICTを活用した生徒に対する個別指導については、欠席や不登校の生徒、また、人前で話すのが難しい生徒などに配慮し、朗読のテストでは、家庭で録音したファイルを提出する形式も許可している。これによって、学校と距離のある生徒とも繋がりを持ちやすい環境作りができている。また、ICTの活用によって改善が図られている学校業務として、修学旅行のアンケート集計があり、簡略化をしている。部活動の大会連絡、欠席連絡などに関してもオンラインの入力フォームを設け、土日や祝日であっても生徒が連絡することが可能になっている。教職員の業務に関しても、学級弁論大会などの評価内容を端末上で記入できるようにし、資料の簡略化や集計の効率化が図られている。 4.K中学校実際の授業では、電子黒板や電子教科書の有効的な活用が見られる。教師が授業中に電子黒板に写した地図や写真を拡大・縮小したり、ペン機能を使って重点を色で囲ったりなど、生徒の関心を惹きつけながら授業が進められている。また、タブレットPCも、生徒は授業で適宜活用しており、教師自作のパワーポイントや動画を使用したり、話し合いの時にはJamboardを使用したりと、場面に合わせた活用がなされている。こうしたタブレットPCの活用によって、授業で様々な利点がもたらされている。例えば、数学では、生徒がノートに書いた答案をタブレットPCで撮影し、すぐに電子黒板に映して共有できるようになった。従来は、共有する際にはノートに書いた答案を黒板に書き写すことが必要であったが、タブレットPCの活用によってこの手間が省けるため、議論の時間を以前より多く取れるようになっているという。また、生徒がタブレットPCから「eライブラリ」のドリル問題を解くと、すぐに解答が教師に送られ答えを確認できるため、教師は生徒の個別のつまずきにすぐに気がつくことができるようになっている。さらに、K中学校に設置されている特別支援教室と夜間中学でもICT機器は活用されており、例えば、文字が速く書けない場合や言葉がわからない場合に、タブレットPCを使って絵や写真を見せることによって意思疎通を図180
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