早稲田教育評論 第37号第1号
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学び」を実現すべく、2019年6月には、「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」が発表された。さらに、同2019年の12月には、GIGAスクール(Global and Innovation Gateway for ALL)構想が発表され、先に発表された「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018〜2022年度)」を深める形でICTの導入が定められた。GIGAスクール構想では、小・中学校の児童生徒に1人1台の学習用端末を提供することを目指しており、この実現に向けた施策として、①全国の学校に高速大容量の通信ネットワークを整備するなどのICT環境の抜本的整備、②デジタル教科書や児童生徒が苦手分野に集中して取り組めるAIドリルの開発などのソフト面の充実、さらに、③ICT支援員などの外部人材の活用と地域の指導者の養成という指導体制づくりの3分野を提示して取り組みを推進している4。これらの学習内容の変更や学習環境の拡充と並行して、法的な整備もなされた。2019年には、「学校教育の情報化の推進に関する法律(令和元年法律第47号)」(6月28日公布・施行)が出され、学校教育での情報化推進に向けた国や地方公共団体等の責務や、基本理念、計画、その他の必要事項が定められた。以上のように、日本における全国的かつ本格的なICT教育の整備は2010年代からが開始され、近年、設備環境の拡充や法的な整備が急速に進んでいる。 2.荒川区のICT教育5政策荒川区は、家庭の経済状況や家庭環境にかかわらず、「すべての子どもたちに『21世紀型能力6』を身につけさせる」ことを目標に、2013年にモデル校として小学校3校と中学校1校に、2014年9月から区内の全34校にタブレットPCの一人1台体制を導入した(ただし、区内全児童にタブレットPCの配布を完了したのは2020年)。タブレットPCの一人一台体制が、全国的に普及するのは、2019年のGIGAスクール構想、とりわけ新型コロナウイルス感染拡大以降であり、荒川区は、全国に先駆けてICT教育を進めてきた自治体の一つとして考えることができる。これ以前から、荒川区では先駆的にICT機器を導入してきた。1990年、文部省が「情報教育に関する手引き」を公示すると、翌年、荒川区教育委員会は、今後のICT機器を活用した学習活動に向けて、小・中学校に教員研修用としてデスクトップ型PCを設置した。2002年には中学校、2004年には小学校のコンピューター教室に40台のPCを導入し、2009年には、政府の「スクール・ニューディール構想7」実現のため、普通教室に電子黒板を導入し、2012年には、国語、社会、算数・数学、理科、生活のデジタル教科書の配信を開始した。タブレットPCの一人1台体制の確立は、こうしたICT環境の基礎の上に成り立つといえる。タブレットPCの全校導入にあたり、導入の2ヶ月前となる2014年7月、タブレットPCの効果的かつ効率的な活用のために、「荒川区タブレットPC活用指針(以下、指針)」を策定した。タブレットPCの活用の基本方針は、授業中のすべての場面で活用するのではなく、教科書やノート、黒板やチョークといったこれまでの道具と同様に、「「授業ツール」として、その特性を活かし効果的な場面で部分的な活用を目指す」とされている。また、各学年の目標や学習場面に応じて効果的な方法を研究・検証することや、「情報モラル」教育を充実すること、グローバル人材に求められる資質・能力である基礎力・思考力・実践力を身につけること、教師のスキルに応じ177

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