注1 ここでいう「漢民族」は中国のマジョリティである。2 南(2018)によると、朝鮮族の「伝統的居住地域」とは、中国において1978年以前に朝鮮族が多く居住し、エスニック・コミュニティを形成していた地域のことである。主に東北三省である吉林省、遼寧省、黒竜江省と内モンゴル自治区における朝鮮族が集住していた自治州、市、区、県、自治県、鎮、民族郷、郷、村を指す。3 同じく南(2018)によると、朝鮮族の「非伝統的居住地域」とは、1978年以前には朝鮮族の居住人口も少なく朝鮮族コミュニティはなかったが、1978年以後には朝鮮族の人口が増え、徐々に朝鮮族コミュニティが形成されるようになった地域を指す。本研究においては中国国内の東北三省、内モンゴル自治区以外のすべての地域を非伝統的居住地域と総称した。4 朝鮮族学校は朝鮮語で授業を受ける。5 漢民族学校は民族言語を使わずに、漢語が学習言語となる。6 https://www.sohu.com/a/118848651_498142参考文献【日本語文献】金 成子(2007)「少数民族の集住地域から大都市へ─中国朝鮮族の首都圏への移動を中心に─」『アジア社会文化研究』8号,110-126頁金 花芬(2014)「在日本朝鮮族の教育戦略─家庭内使用言語と学校選択を中心に─」『人間社会学研究集録』10号,49-70頁権 艶美(2019)「グローバル・シティとディアスポラ・マイノリティ─上海における朝鮮族を中心に─」『朝鮮族研究学会誌』9号,28-49頁権 香淑・宮島 美花・谷川 雄一郎・李 東哲(2006)「在日本中国朝鮮族実態調査に関する報告」中国朝鮮族研究会編『朝鮮族のグローバル移動と国際ネットワーク』アジア経済文化研究所趙 貴花(2013)『移動する人びとの教育と言語:中国朝鮮族に関するエスノグラフィー』三元社張 京萍(2010)「多文化共生社会構築のための社会福祉─現代中国における少数民族福祉の課題─」ニティからの支援が見られる。朝鮮族は人口移動、コミュニティ構造の変容、他言語接触、生活様式の変化などの多くの歴史的な変動を受け、長期にわたり漢民族及び他の少数民族と雑居、多言語が混合する状況に置かれた中で、自民族の言語を維持してきた。しかし、世紀の転換期において社会環境と生活環境が急速に変化していくと同時に、民族文化及び価値観が変容しつつあることも事実である。民族言語は次世代の民族アイデンティティの形成に大きな影響を与える。世紀の転換期は民族文化の移行の過渡期でもあり、今後の民族教育には多くの課題が残っている。朝鮮族の非伝統的居住地域は北京以外にも青島、上海、深圳などがある。たとえ非伝統的居住地域であっても、社会環境によって、教育事情がそれぞれ異なるため、北京以外の非伝統的居住地域における朝鮮族の教育戦略への考察も不可欠であると考える。グローバリゼーション時代において、トランスナショナルな移動を繰り返す人々が増加している。朝鮮族は国内のみならず、海外への進出も続いている。今後、中国国内のみならず、国内を超えた国際的な比較検討も踏まえつつ、研究をさらに進展させていきたいと考える。173
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