早稲田教育評論 第37号第1号
161/228

査の必要があり、今後の課題としたい。課外活動への参加については、一般の高校生よりも、附属・系属校生の方が積極的に参加する傾向が示された。附属・系属校生は、地域行事には約半数の生徒が参加しており、ミュージアムには3人に1人の割合で訪れていた。また、スポーツクラブ、音楽教室については高頻度で通う生徒が多い一方で、ボランティア活動、ミュージアム訪問、地域行事については低頻度で参加する生徒が大多数であり、課外活動の内容によって生徒の放課後の時間を占める割合が異なることがわかった。さらに、いずれかの課外活動に1度でも参加している群(課外活動あり群)とそうでない群(課外活動なし群)の割合を比較したところ、活動ありが67.2%と過半数であった。また、学研調査において男女差が示された各課外活動への参加については、附属・系属校においても同様に男子がスポーツクラブ、女子が音楽教室をはじめとする文化的活動に参加する傾向が高い結果となった。ただし、スポーツクラブに参加している男女の割合について、学研調査では男子12.3%、女子4.4%と男子の方が3倍近く高かったのに対し、本調査では男子22.3%、女子15.8%であるなど、附属・系属校では男女差が縮小される傾向が示唆された。同様の指摘は音楽教室についても当てはまり、「課外活動の種類によって男女差は確認されたものの、その差は一般の高校生と比べると縮まる傾向にある」という点が附属校の特徴として提示された。このように、性別による課外活動のすみ分けが弱いことから、附属・系属校生が自由に課外活動に取り組んでいる実態が示された。次に、附属・系属校生内で行った比較の結果を検討する。課外活動への参加と学習時間の関連については、課外活動の種類に関わらず活動に参加する生徒の方が、学習時間が長い傾向が確認された。ただし、学習にも課外活動にも積極的な群がある一方で、反対にいずれにも消極的な群も存在しており、附属・系属校生の課外活動と学習へ取り組む姿勢は、相反しない傾向にあるものの必ずしも両立するものではなく、生徒個人の性質に因るところが大きいという示唆が得られた。また、通塾と課外活動への参加有無の関係について、附属・系属校生は通塾している生徒の方が課外活動を複数掛け持ちしている割合が高く、学習を犠牲にしているわけではない点が明らかになった。さらに、課外活動に参加している生徒の方がそうでない生徒よりも学習時間が長い傾向あり、課外活動への取り組みと意欲的な学習に関連があることが示唆された。課外活動を行うために生徒の学習時間が長いのか、あるいは学習時間が長い生徒が積極的に課外活動を行うのか、その因果関係は定かではないが、学習塾に通わない生徒に関しては、課外活動への参加が放課後の学習にプラスにはたらいていることがわかった。以上の結果を総括すると、1−1で述べた「附属・系属校の生徒は大学への進学が保障されている分、受験のプレッシャーが一般の高校生より弱いため、課外活動に積極的で、なおかつ高校入学後の学習についてはおざなりになりがちである」という一般的な認識に対して、本調査で得られた結果からは、附属・系属校内で内部分化が起きている実態が示された。附属・系属校生の中には学習にも課外活動にも積極的な生徒が存在し、課外活動に取り組む生徒の方が不参加の生徒よりもの学習時間が長い傾向が見られるなど、放課後の課外活動に取り組みつつ学習もないがしろにしない生徒像が浮かび上がった。一方で、課外活動にも学習にも消極155

元のページ  ../index.html#161

このブックを見る