早稲田教育評論 第37号第1号
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2.一般の高校生の放課後2−1.高校生の平均学習時間ツ、音楽活動、ボランティア活動など、課外活動への参加経験がポジティブに評価されるような変化が起きている。このような状況で、大学入試選抜を経ない附属・系属校生は、実際に一般の高校生よりも課外活動に積極的に取り組んでいるのだろうか。また、一般の高校生よりも予備校や塾、通信教育などの学外学習への参加頻度は低いのだろうか。これらの点を明らかにすることで、先行研究の少ない附属・系属校生の実態の一端を捉えることが可能となる。本稿では、附属・系属校生の放課後の活動実態を、一般の高校生を対象とした過去の先行研究データと比較して論じる。附属・系属校生の特徴を描き出すためには、一般の高校生の放課後の過ごし方に関する分析との対照が不可欠である。そのために、まず2章でベネッセや学研による過去の高校生調査を用いて学外の学習・習い事などの放課後に関する部分を抜粋して分析する。そのうえで、3章以降で附属・系属校生を対象に行ったアンケート調査結果を扱う。3章では附属・系属校生を対象としたアンケート調査のデータ概要を提示し、4章では附属・系属校生の課外活動の参加に関する基礎的な分析を行う。さらに、5章では課外活動への参加と学習時間とのかかわりについて検討し、6章では課外活動への参加および通塾と学習時間の関係について分析する。論中に使用する語句について、「一般の高校生」とは附属・系属高校以外の公立・私立高校の生徒を指す。「学習塾」「AO対策塾」「英会話」への参加を「学校外での学習活動」とし、「スポーツクラブ」や「音楽教室」などの習い事および「ボランティア活動」への参加など、学習に直結しない学校外の活動について「課外活動」と表記し、学校外での学習活動と課外活動を併せて「学校外での各種活動」と総称する。本章では、過去に行われてきた一般の高校生を対象とした放課後の過ごし方に関する調査結果から、学校外での各種活動への参加状況を概観する。具体的には、2015年にベネッセ教育総合研究所が行った「小学生・中学生・高校生の学習に関する意識・実態調査」16(以下、ベネッセ調査)、2019年の東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所による共同調査「子どもの生活と学びに関する親子調査2015−2018」17(以下、ベネッセ東大共同調査)、および2018年に学研が行った「高校生の日常生活・学習に関する調査」18(以下、学研調査)の結果を参照する。ベネッセ調査では、全国の高校2年生4,426名を対象に、学習塾や家庭教師の時間も含めた平日の自宅での学習時間を尋ねた19。その結果、2015年次の平均学習時間は84.4分であった。同調査は1990年より行われている継続調査である。2015年次の調査では、平日に自宅で学習をしない生徒の割合は14.8%で、その割合が2006年次よりも大幅に減少し、過去最も少ない割合となった。逆に1時間以上学習している生徒の割合は72.8%で、2006年次の60.5%よりも大幅に増加していた。このことから、高校生の自宅学習時間が増加傾向にあることが確認された。さらに、同調査の高校の偏差値別の結果からは、偏差値が高い高校でより学習時間が長い傾向143

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