1.問題設定1−1.はじめにキーワード: 附属・系属校、高校生、高大接続、課外活動、放課後学習【要 旨】私立大学を母体とした附属/付属高校(以下、附属校)・系属高校へ通う生徒は、その他の私立高校や公立高校に通う生徒に比べて系列大学への進学が有利であり、入試ルートも複数用意されている。ゆえに、附属・系属校生の学校生活は、いわゆる受験勉強のような学習一辺倒ではなく校外でのさまざまな活動、例えばスポーツクラブや音楽教室といった放課後の余暇活動等に積極的に取り組める環境にあると一般的に認識されている。そのメリットは附属・系属校への入学希望理由にも反映されており、学業に拘泥しない多様な課外活動に彩られた高校生活を送る附属・系属校生像は、世に広く流布されている。では、実際はどのような課外活動にどの程度取り組んでいるのか、それは一般の高校生に比べて高い割合なのか。さらに、放課後という共通した時間の運用において、課外活動に取り組んでいる生徒の方が、そうでない生徒よりも学校外での学習に消極的なのだろうか。本稿では、選抜性の高い附属・系属校生を対象に行ったアンケート調査結果を用いて一般の高校生との比較を行い、課外活動への参加実態を明らかにする。具体的には、附属・系属校生の放課後の過ごし方に焦点を当て、学校外での学習や課外活動への取り組みについて実証的な分析を試みた。その結果、附属・系属校生は通塾や課外活動について、一般の高校生よりも取り組んでいる割合が高いことが明らかになった。また、附属・系属校生の中には学習にも課外活動にも積極的な生徒が存在し、課外活動に取り組む生徒の方が学習時間が長い傾向が確認されるなど、放課後の課外活動に取り組みつつ学習もないがしろにしない生徒像が浮かび上がった。一方で、課外活動にも学習にも消極的な生徒群も存在し、附属・系属校生の中で内部分化が起きている実態が示された。2021年より実施された新大学入試改革への懸念や私立大学の定員厳格化に伴い、近年私立大学の附属・系属校の人気が高まっている。ベネッセ教育情報サイトによると、その志望理由の大部分は「併設大学への進学保障」であるものの、附属・系属校のメリットを「大学受験を気にせず、部活やボランティアなど課外活動に打ち込めること」1と捉える向きも多く、放課後活動の充実も附属・系属校人気の一端を担っている2。駿台予備校/駿台中学生テストセンターも「大学受験のための勉強時間を部活動、学校行事、ボランティア活動にあてて、さまざまな経験を経て社会に出ることができる」3と、その特徴として課外活動への積極的な参加を挙げている。これらの評価より、高校生および保護者が大学の附属・系属校に入学することで大学受験の不安から開放され、課外活動に気兼ねなく打ち込める環境を期待して附属・系属校を志望している141私立大学附属・系属高校生徒の学外活動に関する研究─学校外での学習と課外活動に着目して─山本 桃子
元のページ ../index.html#147