楽教室(楽器・合唱団)、ミュージアム(博物館・美術館)訪問、表現活動(美術製作・ダンスなど)にも参加している者が多い。大学院への進学を希望する生徒は、学校において教科内容を面白いと思い、キャリア関係にも積極的であるだけでなく、このような学校外での活動についても積極的に参加していることが示された。特に博士課程への進学を希望する生徒は、グループで行われることも少なくないであろうボランティア活動のような学校外での学習活動には積極的に参加していた。これを、博士課程への進学を希望する生徒の「興味があることに意欲的」な特徴から考えると、学校外の活動は自分の興味のあることであり、そのような興味を持ち続けられる活動であるならば、集団行動が含まれていたとしても積極的に参加しているものとも考えられる。これらの分析によって本研究が示してきたのは、高校生が希望する大学の教育段階(大学学部、修士課程、博士課程)によって、当該生徒の学習行動や学習に関わる意欲・態度が異なることである。ではこれらの結果から、高校時代から大学院への進学を希望するのはどのような生徒だといえるのだろうか。大学院、特に博士課程への進学を希望する生徒は、大学の希望学部への入学を目的とせずとも、高校1年生のときから学習時間が長く、よく勉強している。また図書館利用も多く、本に親しみ、図書館でも学習をしているものと考えられる。さらに教科内容を面白いと思っており、将来の自分のキャリアや、興味のあることについても意欲的、積極的である。さらに学校外の社会的、文化的活動についても積極的であった。学習時間と教科内容への面白さや興味とを結びつけて考えると、大学院への進学を希望する生徒は、教科内容を面白いと思っており、興味のあることには意欲的であることから、その学びへの意欲が、学習時間を増加させているものと考えられる。また、大学院進学を希望する生徒を、修士課程への進学希望者と博士課程への進学希望者とに分けて考えると、博士課程への進学を希望する生徒のほうが、上記のような傾向を強く示している。吉田(2020)は、文系(特に社会科学系)大学院への進学者や修了者を対象とした研究から、大学院進学者は、「個人の学習欲求という内なる動機付け」によって積極的に大学院で学習をしていると述べた。本稿が対象とした大学院への進学を希望する高校生においても、このような「個人の学習欲求という内なる動機付け」に基づいて、学校内外の学習や活動に取り組んでいるように思われる。他方、大学院への進学を希望する生徒、特に博士課程までの進学を希望する生徒は、学校行事への参加については消極的な傾向がみられた。濱中(2016)は、修士課程修了者の「出された指示を素直に受け止めない」傾向について言及したが、大学院への進学を希望する高校生においても、学校行事のような集団行動や、その中で出される他者からの指示をそのまま受け止めることについて、すでに苦手意識のようなものを持っていることも考えられるのではないだろうか。濱中(2016)が、修士課程修了者の傾向として示したものが、大学院への進学を希望する高校生にも見受けられるとすると、これまで修士課程修了者の問題として捉えられていたものは、大学や修士課程での教育の問題ではなく、大学院進学を目指す者が高校時代から持っている特性であることも十分考えられるだろう。136
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