早稲田教育評論 第37号第1号
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(2)大学院進学を希望する生徒と、大学学部までの進学を希望する生徒では、学校での教科学習や探求学習などの意欲に差異があるのか。大学院への進学を希望する生徒は、「教科内容は面白い」と思っており、「キャリア関係に意欲的」、「興味があることに意欲的」な傾向があった。他方、「学校行事」については、大学学部までを希望する生徒の方が、大学院への進学を希望する生徒よりも積極的な傾向があることが示された。(3)大学院進学を希望する生徒と、大学学部までの進学を希望する生徒では、学校外での活動への意欲に差異があるのか。大学院への進学を希望する生徒は、図書館を良く利用しており、また、学外ボランティア、音他2グループよりも長時間学習をしており、週末については、大学学部までの進学を希望する生徒より、修士課程への進学を希望する生徒が、また修士課程への進学を希望する生徒より、博士課程への進学を希望する生徒が長時間学習をしていることが明らかになった。高校のときから、大学院進学を希望する生徒、特に博士課程への進学を希望している生徒は、大学学部までを希望する生徒より、長く学習をしている。また、学習時間を学年別に確認したところ、高校1年から3年のどの学年においても、大学学部までを希望する生徒より、博士課程への進学を希望する生徒のほうが長時間学習をしていた。さらに、博士課程への進学希望者においては、大学の希望学部への進学のために勉強を頑張らなければいけないと考えている生徒の割合が低いことから、博士課程への進学希望者の学習時間の長さは、大学進学に関わるものではないことが示唆され、大学院への進学を希望する生徒の学習意欲が、学習時間を増やしているものとも考えられた。また、「探求学習への意欲」については、3グループ間で差異がみられなかった。そこで、探究的な学習に関する発表会への参加経験が、探求学習への参加意欲を向上させるのではないかと考え、探究的な学習に関する発表会への参加経験の有無と、「探求学習への意欲」について検討した。その結果、探求的な学習に関する発表会を経験した生徒群においては、大学学部までを希望する生徒よりも、大学院への進学を希望する生徒、特に博士課程への進学を希望する生徒のほうが、「探求学習への意欲」が下がることが示された。探求的な学習に関する発表会への参加は、博士課程への進学を希望する生徒の「探求学習への意欲」を上げるのではなく、逆に下げる可能性が示唆された。この理由を考えるにあたって参考になるのは、大学院への進学希望者は、学校行事には積極的ではない傾向があることである(図3)。探求的な学習に関する発表会を、「探求学習に関連して集団で行う学校行事」として捉えれば、自分の興味があることには意欲的な大学院への進学希望者、特に博士課程への進学希望者は、グループで行われることも多いであろう探求的な学習に関する発表会に関わることで、探求学習に意欲的に取り組まなくなることが考えられた。また、学校で行われる探求学習のグループ活動では、自分自身の興味を優先しづらくなり、探求学習への参加意欲が減じてしまうということも考えられる。135

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