3.調査とデータ概要3.1.調査概要3.2.データの概要な状況が、「優秀な学生が大学院に進学してこない」という大学教員の声、つまり大学院生の資質への疑義に繋がっているのではないかと考察している。ここで指摘されている「出された指示を素直に受け止めない」という修士課程修了者の態度は、大学以降に培われたものなのか、それとも高校時代に大学院進学を希望する生徒においてもみられる傾向であるかは不明なままである。そこで本稿では、高校生が希望する大学の教育段階(大学学部、修士課程、博士課程)に着目し、大学や大学院への進学希望と、高校での学習行動、学習に関わる意欲・態度との関連について検討を行う。具体的には、高校生が希望する大学の教育段階(大学学部、修士課程、博士課程)によって、高校生を3つのグループに分け、それぞれの学習時間、教科学習や探求学習等への意欲などについて差異がみられるのか比較分析を行う。分析にあたって、次の3つの課題を設定する。(1 )大学院進学を希望する生徒と、大学学部までの進学を希望する生徒では、学習時間に差異があるのか。(2 )大学院進学を希望する生徒と、大学学部までの進学を希望する生徒では、学校での教科学習や探求学習などの意欲に差異があるのか。(3 )大学院進学を希望する生徒と、大学学部までの進学を希望する生徒では、学校外での活動への意欲に差異があるのか。本研究では、私立X大学附属・系属高校6校の高校生を対象としたアンケート調査結果を分析対象とする。その理由として、これらの高校では系列大学への推薦入学者が少なくないという特色があるものの、選抜性の高い高校であり、ほぼ全員が大学進学を予定していることがある。このように大学進学を自明視している高校生にとっては、大学卒業後の大学院への進学についても、選択肢のひとつとなるものと思われる。また、本研究は、修士課程だけでなく、博士課程への進学を希望する生徒を対象として分析するため、博士課程への進学希望者が少なくないであろう選抜性の高い高校であることが望ましいと考えた6。調査にあたっては、筆者らが私立X大学附属・系属高校の教職員等に調査への協力を依頼し、そのうち協力が得られた6校を対象として、2019年9月、10月に質問紙調査を実施した。質問内容は、授業以外の学習時間数、教科学習や探求学習などへの意欲、学校外での学習活動、大学や大学院への進学希望(大学学部、修士課程、博士課程)などである。質問調査票の回収件数は4,081件であった。本研究では、高校生の大学や大学院への進学希望に着目するため、希望する教育段階(大学学部、修士課程、博士課程)に回答した生徒を対象として主な分析を行うこととなる。生徒が希望する大学の教育段階(大学学部、修士課程、博士課程)に着目した基礎分析の結果を示す(表1)。大学院への進学率は文系、理系によって異なることが広く知られているが、本127
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