図3 首都圏の高等教育修了者比率図4 首都圏のホワイトカラー比率122ニティワーク」と3つに分化していたものが融合し、専門職としての成立に不可欠なソーシャルワークの共通基盤とも融合した「ジェネラリスト・ソーシャルワーク」の成立が目指され(岩間 2005)、日本もそれを追従してきた。つまりSSWrの仕事に引き付ければ、個人や家族といったミクロシステムだけではなく、学校等の組織や地域社会といったメゾシステム、地方自治体や制度・政策といったマクロシステムのいずれにも働きかけることがSSWrの理想的な実践として求められているといえる。 しかし日本の福祉制度においては、各機関が課題別・分野別・対象者別に設置されており、そこで求められるミクロシステムへの働きかけ(ミクロ実践)が重視されてきた。こうしたソーシャルワークの現実が個別的な支援に止まっているという状況は、後発的に生じたSSWrの仕事においても同様であることが推察される。SSWrのスーパーバイザー経験者からは、ミクロ・メゾ・マクロシステム全体の連動によるシステムの変化を意図した実践を見ることはけして多くはなかったとの報告が上がっている。また現場のSSWrらからも「ミクロ、メゾ、マクロレベルまでを視野に入れた援助のイメージがもてない」といった声も上がっている(佐々木 2022)。5 社会保障が社会福祉の政策としての側面を示しているのであれば、ソーシャルワークは社会福祉の援助活動の側面を示している(古川 2004)。SSWrを例とすると、SSWrは第一義的には利用者に対する直接的な現金給付ではなく、相談によって利用者を支援する「援助活動」の担い手である。しかし児童生徒の教育を保障するために人件費が措置されていると捉えれば、SSWr活用事業は広義の社会保障と捉えられる。しかし前者は「援助活動を行うSSWr」であるのに対して後者が「社会保障としてのSSWr活用事業」と整理されるように、社会保障とソーシャルワークは社会福祉の異なる側面に着目した異なる用語である。6 ソーシャルワークは複数のアプローチを含みこんだ援助方法の体系であり、それらの方法全てが〈無為〉の論理で説明できるわけではない。例えば「危機介入アプローチ」は、クライエントの混乱や動転といった危機に適切に対処できるように、早急な接近によって期間を区切って援助を行う方法論である(Caplan 1961=1968)。こうした支援方法は、存在に対する働きかけの原理である〈無為〉の論理とは性質を異にしている。しかし根底にはクライアントの尊重という価値があるという点では、ソーシャルワークの全てのアプロ―チの価値として〈無為〉の論理が通底しているといえる。7 図3は、平成22年国勢調査結果(総務省統計局)をもとに、佐々木(2006)の高等教育修了者比率についての計算式((大学卒業者+短大卒業者)÷(卒業者総数+未就学者))を用いて首都圏の高等教育修了者比率を表した箱ひげ図である。また図4は、平成27年国勢調査(総務省統計局)をもとに、同じく佐々木(2006)のホワイトカラー比率の計算式((専門職+管理職+事務職)÷就業者総数)を用いて首都圏のホワイトカラー比率を表した箱ひげ図である。高等教育修了者比率の第三四分位は36.95、ホワイトカラー比率の第三四分位は39.64であるが、自治体X・Yはいずれの値も上回っており、ともに社会経済的状況が同程度に高い。8 学校は生徒個々のニーズを柔軟に反映して人的資源を割り当てているわけではないため、時間をとる個別対応には限界がある。詳しくは藤本(2021)参照。9 こうした違和感は、意思決定が困難なクライエントを支援するソーシャルワーカーに必至のもの
元のページ ../index.html#128