表2 本論文で取り上げるインタビュー協力者(筆者作成。)管理職教員ならびに経験者A先生(着任後4年目)B先生(着任後9年目)C先生(退職後4年目)D先生(退職後3年目) 自治体X・Yが本論文の対象に適している理由は、整合と不整合の両方がSSWr自身に経験されやすい、派遣型でSSWrを活用しているからである。SSWrの配置形態には主に配置型と派遣型が存在している。本論文では対象としなかった配置型の場合、デスクは各学校に置かれるため、同僚はその学校の教員が多数となる。こうした環境において一人職となるSSWrは、継続的な勤務によって組織への適合度が高まるにつれて学校を俯瞰的に見ることができなくなり(馬場 2019)、場合によっては不整合が見えにくくなってしまうと考えられる。これに対して派遣型の場合、デスクは教育センター等に置かれるため、同僚は他のSSWrとなる。したがってSSWr同士で何がうまくいき、何がうまくいっていないのかといった情報交換がしやすくなり、本論文で着目する整合・不整合が見えやすくなると考えられる。教員へのインタビューの対象が管理職教員・管理職経験者となっているのは、自治体X・Yに依頼をした際に、一般教員へのインタビューが叶わなかったからである。当初筆者は、現場の不整合に着目するうえで、支援を受ける児童生徒に近い担任や養護教諭も含めて調査協力を依頼した。しかし、多忙な状況下で研究協力が得られず、協力範囲は各校の管理職ならびにSSWrから紹介があった管理職経験者にとどまった。したがって、本論文の知見は断片的なものにならざるを得ない。しかし管理職教員は、学校においてソーシャルワークを最前線で経験する役割にある。自治体X・Yでは、管理職がSSWrに派遣依頼をかけて調整する窓口となっており、SSWrの要否を決める「ゲートキーピング」(保田 2014)の機能を担っている。実際にインタビューを進めていく中でも、多くのSSWrから管理職が支援の窓口として関わり、その方針が支援に大きく影響するケースが多いといった語りが聞かれた。したがってソーシャルワークと指導の不整合を検討する本論文において、管理職教員・管理職経験者の語りに着目する意義は十分にあると考えられる。なお本論文では、7名のインタビュー結果(表2参照)に対して定性的コーディングを行って脱文脈化したインタビューデータを、上述の研究目的に照らして再文脈化する(佐藤 2008)ことでソーシャルワークと指導の不整合を記述していく。定性的コーディングとは、収集された文字テキストデータに対して小見出しとなるような「コード」を付してデータを縮約することである。以上の過程で脱文脈化されたデータを、上述の研究目的のもとに漸次構造化させながら概念を生成し、再文脈化を行った。具体的には、まずソーシャルワークとして行われている支援を「第三者による家庭への支援拡大」(4.)と「眼差しの多重化」(5.)の2つの概念にまとめて記述する。そのうえで、両者が学校における指導とどのような関係を生じさせているのかについて、4・5を比較しながら論じていく(6.)。以上の知見をまとめたうえで考察し(7.)、本研究の限界と今後の課題を述べる(8.)。1133名Eさん(3年目)Fさん(4年目)Gさん(4年目) 4名SSWr
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