1-2.ソーシャルワークと指導との不整合図1 社会福祉のL字型構造108ソーシャルワークは、教育領域では十分な共通理解が得られているわけではない。そこで本論文では、ソーシャルワークの特徴を、対象・方法・価値の3つの視点から整理しておく。第一に、ソーシャルワークの対象は、人と環境の相互作用に向けられる(山下 2016)。ソーシャルワークでは、問題は、人は環境から影響を受けているとともに、環境にも影響を与えているという相互作用がうまくいっていないがゆえに生じると考えられる。したがってSSWrの職務(文部科学省)では、「問題を抱える児童生徒」のみならず、その児童生徒が「置かれた環境」、そして「関係機関等とのネットワーク」や「学校内におけるチーム体制」、「保護者」「教職員」など、児童生徒にとっての広い意味での環境に働きかけることが明記されている。第二にソーシャルワークの方法であるが、これは多岐に渡る方法が用いられる。児童生徒や保護者と学校で会うことが叶わなければ、家庭への架電や訪問を行って関わりをもつこともある。また校内を巡回し、児童生徒の授業観察やインフォーマルな関わりを持つこともある。あるいは学校外の関係機関に電話をし、チーム支援体制を構築することもある。そして既に存在する会議に参加するだけではなく、会議を活性化させる工夫を行ったり、新たに立ち上げることもある。第三にソーシャルワークの価値であるが、これはソーシャルワーカーの倫理綱領3に基づいている。倫理綱領では、「クライエントの利益の最優先」といった、ソーシャルワーカーが重視すべき原理や倫理基準が示されている。第一・第二の特徴だけを鑑みれば、ソーシャルワーカーが働きかける対象・方法は多種多様であり、一見してまとまりがないように見えてしまう。しかしそれは、ソーシャルワークは「何のためか」という価値に基づき、働きかける対象や方法が柔軟に決定されているからである。ところで、このような独自の対象・方法・価値を有したソーシャルワークは、学校において行(古川1998より引用。)
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