早稲田教育評論 第37号第1号
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 (前略)表5 個人の生活に関わる内容約書ける彼らの責任の自覚を促す姿勢が読み取れる。はおおむね、①実用的な内容と、②倫理的な内容という2つの類型に分けられる。『民衆学校課本』の中では、この部分の内容は民衆の日常生活と最も密接に繋がっている。しかしながら、具体的な内容については、書付や領収書の書き方のような、民衆の日常生活ですぐに使用できる実用性の高い実用文と説明文(6課)は少なかった。むしろ、〇〇すべきという上から民衆の人間性や生活様式を規定する倫理的な内容(24課)が極めて多く見られる。そして、倫理的な内容においては、団結・社会参加が12課、衛生・健康が10課、勤勉、節約は3課、好学は3課であり、団結・社会参加や衛生・健康といった精神に関わるものが最も重視されている。団結・社会参加に関しては、第3冊第20課「皆の福利」において、以下のような対話があった。呉:御地には各種の公共事業が展開され、本当に模範都市です!公共の場は非常に綺麗で公園の花木も美しいです!張:まだまだです。呉:御地の遊園地や映画館、駅、道路には、皆さんは公序良俗を守って、なかなか珍しいです。張:そうでもありません。皆さんは、公のためにつくし、公物を大切にし、公序良俗を守った結果、自分も公共も利益を得ました。(下線筆者)この対話の中では、「公」や「公共」、「公序」、「公物」というキーワードが何回も繰り返して用いされる。しかしながら、「公」の概念については、現代に生きている人々には理解は難しくないが、当時の中国人にとっては決してそうではなかった。その理由については、まず、従来の中国の公概念とは、「天、自然、条理、多数、均、つながりの共同、利他、調和など、さまざまなアスペクトを内包している概念」18であり、近代社会か(3)個人の生活に関わる内容最後に、『民衆学校課本』の個人の生活に関わる内容を確認したい。個人の生活に関わる内容実用的な内容実用文と説明文(6課)領収書、書付、クイズ、賀状、招待状と借用書、農地売買契団結・社会参加(12課)道路修築、植林、消防、合作社、誰もが不可欠、農工商の互助、皆の福利、我が家、田華の村、孫家村、好家庭、新生活服装、食事、住宅、禁酒・禁煙、健康な体、伝染病、孫家村、新生活、救急法、好家庭幹、銭大友、職業我が家、読書好、卒業式の講演衛生・健康(10課)倫理的な内容勤勉・節約(3課)好学(3課)103

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