■ 日本:我が国との関係が最も複雑であり、中国人の心に常に存在する国■ アメリカ:裕福、機械が進化し続け、農作業の際にも機械を使用する国■ イギリス:商業は発達しており、世界各地に海外領土を持つ国■ フランス:賑やかな首都を持つ国■ イタリア:史跡が多い国■ ドイツ:工業化が進展した国■ ロシア:最近工業国となった国 表4に示したように、『民衆学校課本』においては、国恥を忘れずに外敵と戦い、自分の国を守ろうとする中国の歴代王朝にいた救国の英雄が次々と登場した。1931年9月に勃発した満洲事変以降、日中間の衝突が激化する中、中国では帝国主義の支配から民族独立及び民族統一の達成を求めるようになった。このような国の要請は教科書の編成にも影響を与えた。「中国人は中国を愛する」というように、愛国についてのことを明白に教科書の中で記述するのはもちろん、歴史上の人物の選別という潜在的なところにも、民衆の民族意識を奮い立たせ、中国民族運動にお表4 『民衆学校課本』に登場した歴史上の人物102登場人物春秋時代、越国は呉国に打ち負かされていた。越王勾践は薪の上に眠り、苦い胆を舐め、自分に恥辱を忘れさせないようにした。十年にも及ぶ苦難に耐え、越国はついに呉国を打ち負かした。南宋の傑出した民族的英雄である。彼は金との攻防戦に活躍し、兵士と人民を愛護した。しかし宰相秦檜は岳飛の出世を妬み、岳飛に無実の罪を着せ、獄中で毒殺した。明代の武将である。戚継光は浙江で倭寇防衛にあたった。旧軍隊の素質不良をみて浙江の義烏県の農民や鉱徒を召募して訓練した新軍は戚家軍と称され抗倭の主力となった。中国の歌や伝説の中で語られる有名な女将軍である。北魏時代、北方民族が侵入を繰り返したため、北魏政権は家から一人男子を徴兵し前線へと向かわせました。花木蘭が病弱な父親の代わりに男装して戦場に向かい、勇敢に戦い抜いて勝利をおさめ、ふるさとに戻って親孝行をした。越王勾践岳飛戚継光花木蘭ここから見ると、『民衆学校課本』での各国に対する評価は以前と大きく変わっている。従来の教科書にあった他国との対立関係はほとんど消し去られ、代わりに価値中立的に世界各国の事情や特徴を紹介するようになった。しかし、これは決して、教科書においては国恥教育や愛国教育が存在しないということではない。前述の国旗・国家の内容がその一例だと言える。また、社会・歴史に関わる内容においては、どのような歴史上の人物を選出するのかということにも、愛国教育の性格が見て取れる。『民衆学校課本』では、越王勾践(第2冊第19課)、孔子(第3冊第3課)、岳飛(第3冊第5課)、戚継光(第4冊第5課)、花木蘭(第4冊第19課)といった歴史上の人物が取り上げられた。そのうち、孔子を除いた4人はいずれも救国の英雄、義士として高く評価されている人物である。個人経歴
元のページ ../index.html#108