図3 『民衆学校課本』第1冊に掲載された「党歌」当化した14。そして、7年後の1937年6月、中央実行委員会常務委員会は中国国民党党歌を中華民国国歌とすることを決定した。こうして、国旗や国歌の「党化」を通して、当時の愛国と愛党は事実上、同一化されるようになった。そして愛国心の育成とともに、愛党心が暗黙知として一般民衆に内面化されるようになったと考えられる。本論ではここで、一般教養に関わる雑多な内容から、『民衆学校課本』において世界各国がどのようなイメージで描写されているのか、またどのような歴史上の人物が教科書に登場するのか、という2つの問題設定により、一般教養に関わる内容を考察していきたい。教科書に書かれる世界各国のイメージに関しては、1935年を境界線とした前後でかなりの違いが見られる。ここでは、1934年に出版された『民衆高級読本』(江蘇省立教育学院編)と、1936年に出版された『民衆学校課本』という2つの教科書の内容を比較しながら、その違いを明らかにする。まず1934年の『民衆高級読本』の内容を確認する。この教科書の第2冊には「中国と各国」という文章がある。その中では、世界各国のイメージは以下のように描写されている。 我が国は土地が広く資源が豊かで、世界強国になるはずが、民衆が怯懦者であり、列強に敗戦を余儀なくされた。日本は我が国の東三省を奪い、ソビエト連邦はモンゴル族を扇動し、100(2)一般教養に関わる内容次に、『民衆学校課本』に掲載された一般教養に関わる内容を確認する。『民衆学校課本』においては、自然、科学、社会、歴史などの一般教養の内容が多くあった。特に「太陽・月と地球」、「日食・月食」、「地球の水と陸」、「違う肌の色」という、国境を超えた世界や宇宙に関する文章も教科書に掲載し、教科書を通して、民衆の視野を広げていくための努力が読み取れる。(翻訳)第1冊 党歌三民主義は、我が党の尊ぶところであり、それによって民国を建設し、大同に進む。多くの志士よ、民衆の先鋒たれ。朝夕怠ることなく、主義に従え。よく勤め勇気を奮い、必ず信を守り、忠を尽くし、心を一つにし、終始貫徹せよ。
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