98図1『民衆学校課本』第1冊第1課「中国人」、第1冊第2課「国旗」さらに、国家に関わる内容は教科書の冒頭から連続で登場している(第1冊第1課「中国人」、第2課「国旗」、第3課「国貨」)。その内容には、中国に対する帰属意識も含む中国のナショナル ・アイデンティティを創出しようとする姿勢が読み取れた。第一課「中国人」、第2課「国旗」の具体的な内容は以下である。第1冊第1課「中国人」においては、中国人に対する説明や、中国人の居住地域また生活事情などは述べられず、この国に生きている「私」、「あなた」、「彼」の「中国人」という共通のアイデンティティを何度も繰り返し、そして「私たち中国人は、中国を愛する」と述べ、愛国心を強調している。これと同じように、第2課「国旗」においても国家への愛、また国旗への愛を示している。国旗はなぜこのようにデザインされたのかというような説明よりも、「私たち中国人は国を愛し、国旗も愛する」という態度や価値観的なものを強調するフレーズが反復されている。このような文章から、国旗は国家の象徴であり、民衆が国家を愛するならば国家の象徴である国旗を愛さなければならない、というポリシーが民衆に伝えられた。また、この部分では、表面的には国家に関する内容は政党に関するものよりはるかに多くなっているが、その中には国家か政党かの判断が難い内容も少なくない。例えば、前述に登場した国旗、つまり青天白日満地紅旗は、中国革命同盟会(国民党の前身)の旗として使われた青天白日旗を基にデザインされたものである。青天白日満地紅旗をめぐって、当時は大きな論争が起きていた。1911年の辛亥革命後、初代中華民国大総統となった袁世凱は「五色旗」を国旗に採択した。そ(訳:第1冊第1課「中国人」:私は中国人。あなたは中国人。彼も中国人。私たちは中国人。私たちは中国を愛する。第1冊第2課「国旗」:国旗、国旗、なんと美しい!私たちは国を愛し、国旗も愛する。私たちは国旗に敬礼する。)
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