早稲田教育評論 第36号第1号
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(International Baccalaureate.(n.d.)より作成)国際バカロレアプログラムにおける批判的思考指導モデルの検討 ─教育学諸理論の関係性と教師の語りに着目して─表1.IBの4つのプログラム1997年1994年1968年2012年た上で、核として組み込まれている教育学諸理論と哲学の抽出を行う。そのために、国際バカロレア機構が発行する文書や、国際バカロレア機構が認証する教材の分析に関する先行研究を中心に検討し、IBプログラムにおける批判的思考指導の構造を明らかにする。第3節では、DPで指導を行っている教師への聞き取り調査を行い、DPの授業を行う際に意識していることや、実施していることを教師たちの語りから明らかにする。以上を踏まえ、第4節では、教師たちの語りが批判的思考指導に関する教育学諸理論と、どの程度符合しているのかを検討し、今後の課題を示す。4つのプログラムに通底する共通の教育哲学として、「知識やスキルの習得をこえたところにある『全人的』な教育」(International Baccalaureate Organization, 2014, p. 8) であることが挙げられる。とりわけ、核心的な教育理念として「多様な文化の理解と尊重の精神を通じて、より良い、より平和な世界を築くことに貢献する探究心、知識、思いやりに富んだ若者の育成」(International Baccalaureate Organization 2014, p. 3)を掲げ、IBプログラムでは、これを「IBの使命(IB mission statement)」として位置付けている。この教育理念を実現するための、学習者としてあるべき姿を、「国際バカロレアの具体的な最上位の教育概念」(福田 2015,p. 134)である「IB学習者像(IB Learner Profile)」として示している(表2)。Primary Years Programme(PYP)初等教育プログラムMiddle Years Programme(MYP)中等教育プログラムDiploma Programme(DP)ディプロマ・プログラムCareer-related Programme(CP)キャリア関連プログラム3〜12歳幼稚園・保育園から小学6年生まで11〜16歳小学6年から高等学校1年生まで16〜19歳高等学校2・3年生16〜19歳専門学校等を目指す高等学校2・3年生32.国際バカロレアにおける批判的思考の位置づけ2.1 IBの教育哲学と批判的思考の関係プログラム名設立年対象年齢日本の該当学年・対象IBプログラムにおいては、なぜ批判的思考が重視されているのだろうか。その理由は、IBプログラムで掲げられている教育哲学に内包されている。なお、IBのプログラムには年齢に応じ、以下の4つのプログラムが用意されている(表1)。

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