早稲田教育評論 第36号第1号
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消極的であったために『新学校制度実施準備の案内』においては、中学校に関しては「官公立の中学校においてはなるべく男女共学とする」7とされており、性差の解消に向けて私立学校においては「学校自身で自由に決定する」8と示され、徹底した指導が存在していたわけではなかったことがわかる。次に『新しい中学校の手引』9(1949年2月)では、中学校にその焦点が絞られている。同書は全15章で構成されており、その内容としては中学校での教育方法や、教師のあり方、設備などについての目指すべき理想が述べられている。それらの中から、第1章を見ると新制中学校がなぜ必要であったのかということについて言及されている。その内容を見てみると「すべての児童たちは、同じ資格で、同じ程度で、比較ができる信用をもつた、学校に入ることが出来るし、又、新制高等学校の入学についても、同程度の学校へ進学することができるのである」10と述べた上で「即ち、学校の生徒たちは彼らの生活上の要求を満たすために、他の学校の生徒たちと同じように、立派な教育を一段と多く受けることゝなつたのである」11として、新制中学校の存在意義を教育の機会均等であったとしている。さらに、新制度内部における中学校の立ち位置に関しては、新制中学校が、経済的、能力的に新制高校に進学できない生徒にとっての教育上の終点となると述べた上で「新制中学はかれらに様々な職業を探求し、自分に興味のある、そして成功しそうな職業を選ぶ機会を與える。又、言語に関する基本的技能とか、数学とか、彼らの作業、あるいは社会生活においてかれらを有数に活動せしめる工作とかについての訓練を與えるものでもある」12として、高校に行くことができない生徒に対しても、社会生活を営む上で必要となる知識などを与える教育機関として認識されていたことがわかる。そして『新制中学校建築の手びき』13(1949年3月)では、新制中学校をどのように建築するのかが述べられている。以下のような目次となっている。第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 第六章 第七章 第八章 校地の選定と規模必要な室とその規模校舎の計画と概要教室とその他の教室について諸設備運動場耐震構造と防火校舎の維持保全同書は「手引書」ではあるが、教育方針や内容ではなく、新制中学校の校舎をどのようなものとして計画するのかを述べているのである。その「はしがき」を見ると、同書においては新制中学校の建築に関して「新制中学校は将来拡張することができるように計画され、作られる必要がある。新制中学校の生徒数は義務教育の延長で急激に増加したあとでも、一般の人口増加によって長年の間には段々増加するものである」14として、将来を踏まえた上で建築をすべきであるとされていた。そうした計画を立てた上で「経済の許すかぎり、学校を都市や町や村では最も魅221

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