早稲田教育評論 第36号第1号
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注 1 本稿では、一般的な社会組織を含む民間の力を「社会力量」という用語で統一している。2 3 褚宏啓・賈継娥(2014)「教育ガバナンスと教育善治」『中国教育学刊』、第12期 、6-10頁。4 岩崎正洋編(2011)『ガバナンス論の現在』、勁草書房、9頁。5 陳豊(2002)「教育行政の機能転換についての考え方」『華東理工大学学報(社会科学版)』、第4期、 武者忠彦(2007)「地方都市のまちづくりとガバナンス」『地理科学』、第62巻、第3期、40頁。6 法律で認可される「社会力量」は、中国の民政部で正式に登記される「社会力量」であり、法律上の名称は「社会団体」、「民弁非企業単位」及び「基金会」である。上述3種の法律で規定された「社会力量」の以外に、法律で認可されていない「社会力量」の形式も幅広く存在している。これらの「社会力量」は法律で規定された名称を持たないが、実質的に「社会力量」として実践の現場で活躍している。7 陳韶峰(2003)「わが国の教育行政主体について試論する」『江蘇教育学院学報(社会科学版)』、8 「简政放权(簡政放権)」は政府機構を簡素化し、権限を地方行政部門等に委譲することである。9 馬全中(2014)『サービス型政府の構築におけるNGOの役割に関する研究』、南京大学。10 蒲蕊(2015)「教育ガバナンスにおける社会参加について」『中国教育学刊』、第7期、26-31頁。11 史華楠(2015)「教育管理、弁学、評価分離の条件、目標及び方策に関する分析」『中国教育学刊』、12 「老少边穷地区(老少辺窮地区)」は、旧解放区、少数民族地区、辺鄙地区や貧困地区を指している。13 表1について以下の点を説明する必要がある。第一に、表1における塗りつぶし箇所は、「社会力量」に関わる各表現が初出したところを示している。第二に、初出したところとは、本稿で取り上げられたデータで初出したところである。第三に、社会組織に関する定義によると、社会組織には基金会、民弁非企業単位や社会団体が含まれている。本稿で取り上げた「社会組織」は狭いがある。また、国際的な水準への教育の質的向上のためには、政府のみでは力が不十分である。ましてや、社会主義市場経済体制の改革や新しい公共時代の到来に伴い、中国政府は、「小政府、大社会」という理念から、行政の簡素化をさらに実施し、「社会力量」を教育ガバナンスに参加させることをより一層重視してきた。そして「社会力量」に対しては、物資提供から、知力提供そして「社会力量」の連携やネットワーク化を重視するようになったのである。一方、「社会力量」に対する政府の警戒心は相変わらず強い。国務院は「社会団体登記管理条例」(1989年に公表、1998年に再公表、2016年に修訂)を公布し、「二重管理体制」(NGOに対して登記管理部門と業務主管単位という二つの上部単位が責任をとる管理制度26)が構築された。そして、「民弁非企業単位登記管理暫行条例」(1998年)、「基金会管理条例」(2004年)、「中華人民共和国国外非政府組織の国内活動管理法」(2017年)、「社会組織登記管理条例」(2018年)といった一連の文書も相次いで公布した。中国は政府の統制力が強いため、教育ガバナンスにおける「社会力量」の活動に制限も少なくない。しかし、貧困地域における教育支援事業において、「社会力量」の自立性も見られ、政府の不合理な政策への是正といった試みもある。今後は、「社会力量」の立場から、教育ガバナンスにおけるその自立性や民意の政府への反映といった役割をさらに実証的に考察していきたい。84-87頁。第6期、40-42頁、55頁。第7期、65-72頁。217

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