以下EC)33という来館者の学びのデザインを専門とするスタッフを対象に聞き取り調査を行った。インタビュー調査は、調査対象施設一か所につき60-80分程度で、各館内にて行った。質問内容については、あらかじめこちらの尋ねたい項目をメールで提示したうえで、当日のインタビューに臨んだ。インタビュー調査の際には、「子どもにとってミュージアムの経験はどのようなものであると考えるか」という共通の質問項目に加えて、インタビュイーにそれぞれの館で取り組んでいる特徴的な学習プログラムについても自由に話してもらう半構造化インタビューの形を採用した。当日は、筆者が各館を訪問し、インタビュイー2名に対して同時に聞き取りを行う集団インタビューを実施した。インタビューはキアズマでは英語で行い、アテニウム美術館では現地通訳者(日本語・フィンランド語)の協力を得て、日本語によって実施した。収集した音声データは、英語の場合には英語文字起こしの後に筆者が日本語訳を行い、コーディングを実施した34。日本語の場合には、文字起こししたうえでコーディングを実施した。なお、インタビューデータは、コーディングに際し一部発言の順序を入れ替えた箇所もある。分析方法は、インタビュー対象者の語りのデータを意味内容ごとにコードを振り分け、定性的コーディングを行った。以下では、語り原文の一部を取り上げ、インタビュー結果より明らかになった子どものミュージアム経験の意義について、総合的な考察を行う。なお、インタビュイーの敬称については省略する。本節では、コーディングしたインタビュー内容を引用しながら、現地ミュージアムの教育プログラムの設計に関わるスタッフが、どのような思いで子どものミュージアム経験を位置づけているかを明らかにする。館ごとに扱う所蔵品の性質が異なることから、はじめに国立現代美術館キアズマでのインタビュー内容、次に国立アテニウム美術館でのインタビュー内容を分析する。国立現代美術館キアズマでは、生後3カ月の乳幼児から参加できる親子ワークショップ35が毎年実施されるなど、幼いうちから現代美術に親しむための取り組みが積極的に行われている(図4)。施設名国立現代美術館キアズマ(Museum of Contemporary Art Kiasma)国立アテニウム美術館(Ateneum Art Museum)調査時期80分60分195時間形式言語集団英語集団日本語※通訳有3.2 分 析① 国立現代美術館キアズマ表1 インタビュー調査概要対象者教育普及責任者ミンナ・ライトマー2017年9月8日教育担当者トゥーヤ・ランタラ教育普及責任者サトゥ・イトコネン2017年9月7日教育学芸員エリカ・オスマン
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