めていく過程を支援していく役割を意識するようになったことを語っている。歴史を指導するt3は、問いのレベル感について言及する。「(指導する際に)エビデンスをもってくるんですけれども、そこからフェーズを上げていくんですね、質問自体を。じゃあ、個人が社会に与える役割とはなんですか、とかっていうふうに質問のフェーズを上げていくんです。」と語り、問いのレベルを低次思考レベルから高次思考レベルに引き上げていくことの重要性を語っている。② 指導をどのように行っているのか─対話型・高次思考レベルの問いを中心に国・公立高校で歴史を指導するt2は、問いを中心とした授業を行うためには、十分な知識量が必要であることを語る。t2によると、「(授業の中心には)問いがあって、学問的な問いがあって。それを立証していくための内容は何かっていうことを、生徒が選ぶ。選ぶための資料は、提供されてなきゃいけないから、そういう意味では、内容も大事。DPで点数取れる子たちは、めちゃめちゃ知識量多いですよね」と、DPで良い成績を修める学習者は知識量も豊富であることについて触れている。続けてt2は、授業での指導アプローチについて、「(提供する資料には)膨大な知識があって、その中からグループワークさせて、どの知識をどういうふうに構成するか、グループで考えさせていく」と語り、学習者に十分な情報を提供した上で、それらを活用しながら、対話型の授業展開を行っていることに言及している。一方、t2よりも教員経験が長いt3は、「IBの場合、やっぱコンテンツも覚えなきゃいけないけど、概念学習もさせるってことのバランスをどう取るかってことのほうが難しいですね」と語り、知識を網羅させることの重要性を指摘しながらも、それだけに偏ることなく、概念理解を深める指導とのバランスを取ることの大切さを語っている。では、概念理解を深めさせる指導アプローチとして、DPを指導する教師たちはどのような指導アプローチを行っているのだろうか。国・公立学校で数学を指導するt4は、「数学でグラフ電卓を使って、実社会の事象を考えるといったようなこともよくやってるんですよ。そういうのを考えると、より実社会に近いというか、生きていくスキルを付けていけてると思う側面(がある)」と語り、教育方法として実社会との結びつきを意識させる取り組みを行っている点を語っている。実社会との結びつきを意識させる指導は、数学だけに限ったことではないようである。英語教師であるt5は、指導アプローチとして、「世界銀行のウェブサイトに、いろんなデータがあるんですよ。貧困の指標ですとか、環境のいろんな指標ですとか。そういったのを、生徒に紹介して、どこの国がどういう年ごとに変わっていったか、っていうのが見えるようなものなので、それを生徒に、こういうのがあるよというふうに伝えて、そのデータから関係性を、見いだしなさい、みたいな」と英語授業において、実社会で活用されているデータを基に、論を組み立てていくような問いを投げかけていることを紹介している。こうした問いは、分析したり、評価したりといった高次思考レベルの問いかけに分類される。③ カリキュラム設計をどのように行っているのか─逆向き設計と概念型学習を中心にでは、問いを中心とした授業展開を設計するうえで、教師たちはどのような点に配慮しながら指導計画を立てているのだろうか。14早稲田教育評論 第 36 巻第1号
元のページ ../index.html#20