早稲田教育評論 第36号第1号
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 ATCは、フィンランド史上最大の若者を対象とした文化主導のイベントです。このキャンペーンの規模は世界的に見ても非常にユニークです。教師を含め、年間約65,000人が参加しています。2017-2020年度には、3つの年齢層の中学1年生全員に、あらかじめ手配された2回の公演や展覧会への訪問が提供されました。2つのうちの1つは自分の地域で、もう1つはヘルシンキ近郊で行われたものが対象となりました。また、首都圏に住んでいる生徒には他の場所への旅行が手配されました。旅費と入場料はすべてこのキャンペーンで賄われました。 フィンランド文化財団は、2017年にフィンランドの100周年記念式典の一環としてこのキャンペーンを開始しました。フィンランドのスウェーデン文化財団が資金提供に参加しており、そのほかフィンランド子ども文化センター協会は、専門家のアドバイス、旅行の手配、学校と芸術機関の連携の管理など、キャンペーンの実践的な実施を担当しています26。な感想を抱いているのか。本節では、2017年からフィンランド国内の8年生(14-15歳)の生徒を対象として実施されているプロジェクト「アート・テスターズ・キャンペーン(フィンランド語:Taidetestaajat,英訳:The Art Testers Campaign)を参照し、子どもたちがどのような文化体験をしているのかについて分析する。アート・テスターズ・キャンペーン(以下ATC)は、2017年から始まったフィンランド文化財団(Finnish Cultural Foundation)が主導している中学生を対象としたアートイベントプロジェクトである。Webサイトによると、毎年6万人の生徒と5千人の教員が対象となっている24。アートイベントとは、財団をはじめとするプロジェクト団体によってフィンランド全土から選定されたもので、舞台の公演や美術館や博物館で行われている展覧会などが対象となっている。同プロジェクトでは、これらの観覧について中学1年生(14歳の生徒)を対象に年に2回体験できる機会を設けている。その概要について、以下ATCのWebサイト25掲載の情報を参照する。このように、ATCはフィンランド文化財団を中心として、スウェーデン文化財団(The Swedish Cultural Foundation in Finland)やフィンランド子ども文化センター(The Association of Finnish Children’s Cultural Centers)など、国内外の文化団体と協力して行っている大規模プロジェクトである。また、年2回の文化体験のうち、首都ヘルシンキ以外の地方の子どもは、地元のイベントを一つとヘルシンキ近郊でのイベントを一つ、と地元と都市部の異なる地域のアートイベントを体験できるような仕組みになっている。ここで着目したいのは、アートイベントの観覧料だけでなく、学校から当該施設への移動費についても財団が支出するという包括的なサポートである。特に地方からヘルシンキへ上京する場1912.3 14-15歳向けプロジェクト「アート・テスターズ・キャンペーン」  今まさに進行中のATC(ART TESTERS ON THE MOVE)

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