図1 教育システムの状況に関する認識別にみた移民へのまなざし(OECD2017『移民の子どもと学校 統合を支える教育政策』p.66より転載)る移民の影響」で数字が大きい方が「豊かになった」、小さい方が「希薄化させた」を示し、10段階で表された。横軸についても同様に、「教育システムの状況に関する認識」について数字が大きい方が「きわめて良い」、小さい方が「きわめて悪い」を示し、10段階で表された。図1からは、調査に参加した27カ国のうち、フィンランドが最も高い割合で、移民が増加したことによって文化生活が豊かになったと回答していることがわかる(平均8.01)。また、教育についても、27カ国中で最も教育への認識がポジティブに捉えられている(平均7.14)。このような結果になった背景を、OECDは次のように推察している。 これは部分的に、教育を通して移民が直面する困難に関する情報が提供されるのみならず、多様性の価値をより深く理解し、コミュニケーションや関係性のマネジメントに取り組む開放性や能力をより深く育むことに教育が貢献しているからという理由によるものだといえよう15。このように、移民に対しての政府のはたらきかけはもちろん、異なる文化のバックグラウンドを受け入れる開放性や能力を教育によって育むことで、多様性を尊重する社会的土壌が形成されていることが指摘されている。ここでは、教育システムについての質問項目が用いられているが、この多様性への理解の促進は、学校のみならずミュージアムを含む社会教育の場においても欠かせない重要な主題である。欧州社会調査の結果は、フィンランド市民が教育によって移民への寛容なまなざしを抱いていることを示唆しており、そのまなざしの醸成にはミュージアムも一端を担っていると考えられる。189
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