早稲田教育評論 第36号第1号
19/258

62433t1t2t3t4t5非DP校での経験年数国際バカロレアプログラムにおける批判的思考指導モデルの検討 ─教育学諸理論の関係性と教師の語りに着目して─表7.聞き取り調査対象者の一覧言語B(英語)歴史歴史数学言語B(英語)を行い、会話の内容等が外部に聞かれる状態ではないことを確認した上で実施した。そして、データの記録方法はICレコーダーを用いて行った。表7の担当科目名は、DPで用いられている科目名称である。「言語B(英語)」は現行の高等学校学習指導要領上の必履修科目コミュニケーション英語Iに該当し、「歴史」は世界史A、世界史B及び日本史A、日本史Bに該当する(文部科学省,2019)。本項では、5名の教師による語りを、図2で示したIBプログラムにおける批判的思考指導モデルのうち、問いを中心とした授業を核とし、横の関係である指導アプローチ上の工夫と、縦の関係であるカリキュラム設計上の工夫、の3点から考察を行った。教師の語りはゴシック斜体で表記し、語りの中で意味を補う必要があると判断した部分については(  )内で追記した。① 問いを中心とした指導アプローチをどのように行っているのか他方、t3とt5は、問いを発する教師のマインドセットについて言及する。t3は「今までは、答えはいくつもあると言いながら、ある程度私の意見を言ってたりするところはありました。でも今は、こういう意見もあるよ、というものは生徒が言っていくので。それを引き出すような手法に変えてます」と語り、教員が答えを導かないことの大切さを語り、指導方法を変容させていったことを語った。英語教師であるt5は、「問い掛けっていうのは、明らかに今までは自分の中に答えがあって、一つの答えがある程度出てくるようなことを聞いてた傾向は多分あって、でも私もよく分かんない中、聞いて、どうなんだろうねって、HowとかWhyとかWhatとかのクエスチョンが多くなった気はします」と語り、教員がファシリテーター役となり、学習者が学びを深国・公立高校国・公立高校私立高校国・公立高校国・公立高校20 317 8 91314 113 5 6番号所属先3.3 5名の教師によるインタビューの語りからの考察担当科目経験年数DP実施校での経験年数DPを指導する教師たちは、どのように問いを中心とした授業を行っているのだろうか。t1は、「こちらからの発問っていうのも、質が重要ですよね。でも、いいタイミングで、なんかいい発問ができるっていうところも求められるわけで」と語り、教師が発する問いの質を高める必要性を語る。続けてt1は、「生徒に話し合わせる、ディスカッションさせるとか、例えばディベートしてもらうとか、何かのお題について生徒が話さないといけないような環境をつくる」と語り、思考を深めるための問いかけの在り方や、問いをきっかけとして深い学びにつながる学習の場を意図的に作っていくことの重要性を指摘している。

元のページ  ../index.html#19

このブックを見る