1782点目のノートの役割(タスク14)に関しては、LMSの機能的な側面が現れたと言っても過言ではないだろう。事実、オンライン授業ではパソコンやスマートフォンの画面上で完結してしまう。授業で必要となるスライドや資料なども一元的に管理される上、必要な際にはダウンロードやスクリーンショット、メモ書き機能などで事足りる。学習者の好みもあるだろうが、オンラインEMIという授業形態に限った場合、よほど意識的でない限りノートを取る必要性に駆られる状況が生じにくいことからも理由が伺える。3点目のペア活動の機会(タスク23)はLMSの機能的な問題とも関わっている。この場合は対面とリアルタイム型の対比になるが、早稲田大学のリアルタイム型の場合は多くがZoomを用いたものとなっている。Zoomの機能の1つにブレイクアウトルームという参加者を設定に応じて自由に複数の「部屋」に分けるものがある。各部屋に割り当てられた参加者は同時に複数の部屋にいることができず、基本的には一度全体のメインルームに戻り、管理者である教員が再度ブレイクアウトルームに割り当てるという機能になっている。これにより複数の学生をランダムでグループ分けすることが容易になった一方、教員が各部屋の進捗を把握し辛くなったのも事実であろう。実際に、ペア活動に関する言及が皆無だったのがその証左にもなっており、仮に20名の学生をペアで分けると10の「閉じた」部屋に分割されてしまうため、教室で全体が見渡せる上で導入するペア活動とは先述した両者の空間的側面において一線を画すものであろう。このように考えると、いわゆるアクティブラーニングの手法として代表的な「シンク・ペア・シェア」(早稲田大学大学総合研究センター,2016)といった一連のペア同士によるタスクの導入も、オンラインEMIではまた異なったタスクの順序や組み合わせが取り入れられ、学生の主体性を活かす教育が実現される可能性も指摘できる。本研究では本学科の学生13名に半構造化インタビューを実施した。インタビューから得られたデータを基に、先行研究で確認されたタスクとの照合や新たに確認されたタスクを抽出するために多段階式に分析を行った結果、最終的に計65のタスクに分類され、その内訳は(1)対面・オンラインEMI共通タスク31、(2)オンラインEAP特有タスク21、(3)オンラインEMI特有タスク13となった。この3分類に基づき、オンラインEAP/EMIにおけるタスクの特徴や従来の対面式タスクとの相違点を比較した結果、前者ではオンラインEAPのタスクがEMIの前段階として平易で細かなタスクに分割、オンラインEMIのタスクでは資料の役割および教員からの働きかけが顕在化というオンライン授業におけるタスクの特徴が2点挙げられ、後者では(1)読みの画一化、(2)ノートの役割、(3)ペア活動の機会という3点が対面式EMIとの比較から浮かび上がってきた。本研究の意義としては、EMIを学科レベルで導入している本学科において、オンラインEAP/EMI双方の授業種におけるタスクを包括的に抽出したことである。これは太原他(2020)が対面式EMIのタスクを抽出していた点を鑑みると、本研究ではオンラインEAPおよびオンラインEMIというより広範な授業種・授業形態を考慮したタスク一覧の作成に貢献したと言える。加えて、対面・オンラインEMI両者に共通するタスクを特定したことで、今後対面とオンライン6.結 論
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