早稲田教育評論 第36号第1号
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RQ1:オンラインEAP/EMI授業で、学生はどのようなタスクを経験していたのかRQ2:RQ1を踏まえ、対面式のEMI(SS型)におけるタスクとの違いやその特徴は何か2 太原他(2020)ではBrown and Iyobe(2014)に基づき国内のEMIを“Ad hoc”、“Semi-structured (SS)”、“Integrated”、“+α program”、“English-taught program(ETP)”、“Campus-wide”の6種に分類し、SS型(専門科目の複数授業が英語で開講)とETP型(ほぼ全ての専門科目授業が英語で開講且つそれにより学位を取得可能)のEMI経験者を対象にアンケートを実施している(本学科はSS型に該当し57名中33名が該当)。本研究の着想となる太原他(2020)はタスクの観点から学生の英語力把握に必要となるニーズ分析を実施した。当該研究では大きく2段階に分かれており、先ず11名の学生へのインタビューから47のタスク一覧(資料1)を作成し、各タスクの頻度と難度を4件法で尋ねるアンケートを卒業生含めた計57名の2種類のEMI経験者2に回答してもらった。その結果をEMIの種別に「高頻度・高難度」、「高頻度・低難度」、「低頻度・高難度」、「低頻度・低難度」という4象限に当てはめて比較し、それぞれのEMIにおけるタスクの特徴や優先して強化すべき必要な英語力を特定した。このニーズ分析はあくまで対面式のEMIで確認されるタスクを基に実施したものであるが、「今後のニーズ分析の方法論的貢献も示唆」(太原他,2020,p. 190)とあるように、この分析から作成された47のタスク一覧や新たなオンラインEAP/EMIで確認され得るタスクを抽出する際にも大いに参考となる。同様に、新たなタスクが抽出できたとすれば、それは「オンライン」や「EAP」という観点から先行研究に知見を加えるということに繋がり、本研究文脈のみならず類似したEAP/EMIの文脈にも少なからず貢献することが可能となる。以上の先行研究を踏まえ、本研究は本学科の「オンラインEAP/EMI」を経験した「学生」に着目し、「タスク」の観点から必要とされる英語力のニーズ分析を行うと布置可能である。そのため本論では以下2点の研究設問を設定する。本研究は早稲田大学教育学部英語英文学科の学生を対象とした事例研究であり、太原他(2020)が実施した学生視点のニーズ分析をオンラインEAP/EMIの文脈で実施するものである。これにより、対面式EMIにおけるタスクに限定されない、オンラインEAP/EMIといったより多様な授業形態で経験されるタスクの特定にも繋がり、ここで抽出したタスクの情報は今後学科として詳細なニーズ分析を行っていく上でも有益な基礎情報となる。データ収集については後ほど詳述するが、参加希望者13名の学部学生に当該年度のオンラインEAP/EMI経験を深掘りする形で半構造化インタビューを実施した。分析手順としては、インタビューから得られたデータに対して後述する6つの手順に従った多段階式の分析を行い、著者間でも複数の議論を重ねつつ、タスクの特定・抽出などを行った。なお、本調査におけるインタビューに関しては本学研究倫理審査委員会から承認を得、参加者からも了承を得た上で実施している(承認番号:2018-088)。1693.方法論3.1.研究デザイン概要

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