キーワード: 対面授業、オンライン授業、アカデミック英語(EAP)、英語による専門科目(EMI)、半構造化インタビュー、タスク、学習者ニーズ【要 旨】本研究の目的は、2020年度に早稲田大学教育学部英語英文学科で実施されたオンラインEAP(アカデミック英語)およびEMI(英語による専門科目)を受講した学生の経験からどのようなタスクの種類が確認されるかを明らかにすることである。2016年のカリキュラム変更から、当該学科でも多くのEAP/EMIに関する知見が積み重ねられてきたが、その全てが対面式の授業形態を前提とするものであり、オンラインでの新たな授業形態が実施されている昨今ではこれまでの知見も慎重に検討される必要がある。本研究では本学科の学生13名に半構造化インタビューを実施した。インタビューから得られたデータを基に、先行研究で確認されたタスクとの照合や新たに確認されたタスクを抽出するために多段階式に分析を行った。その結果、最終的に計65のタスクに分類され、その内訳は(1)対面・オンラインEMI共通タスク31、(2)オンラインEAP特有タスク21、(3)オンラインEMI特有タスク13となった。この3分類に基づき、オンラインEAP/EMIにおけるタスクの特徴や従来の対面式タスクとの相違点を比較した結果、前者ではオンラインEAPのタスクがEMIの前段階として平易で細かなタスクに分割、オンラインEMIのタスクでは資料の役割および教員からの働きかけが顕在化という特徴が2点挙げられ、後者では(1)読みの画一化、(2)ノートの役割、(3)ペア活動の機会という3点が対面式EMIとの比較から浮かび上がってきた。本研究の意義としては、EMIを学科レベルで導入している本学科において、オンラインEAP/EMI双方の授業種におけるタスクを包括的に抽出したことや対面・オンラインEMI両者に共通するタスクを特定したことで、今後対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド型の授業形態で同様のニーズ分析を実施する際にも方法論および結果という観点から貢献できたことが挙げられる。2020年度はコロナウイルス感染症の世界的蔓延により波乱の年となった。この感染症対策に伴う影響は高等教育にも及び、本研究が対象とするEAP(English for Academic Purposes;アカデミック英語)およびEMI(English-Medium Instruction;英語による専門科目)においても例外なく該当する。ここでのEAPは特定の目的のための英語(English for Specific Purposes; ESP)から派生した学術的な内容を扱う教授形態を指し、高等教育ではEMIに移行するための前段階として位置づけられることも多い(Hamp-Lyons, 2011)。それに対しEMIは「英語が第1言語ではない国や地域において、アカデミックな専門科目を英語で学ぶこと」(Dearden, 2014, p. 2)と定義され、専門的な内容を英語で学ぶという点においてEAPとその性質や目的が区別される。国内1651.序 論オンラインEAP(アカデミック英語)と ─学習者ニーズの観点から守屋 亮・松村 香奈EMI(英語による専門科目)授業におけるタスクの抽出
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