12345678後の社会経済の混乱期であり、家庭的・経済的理由による長期欠席生徒が多く1、経済的理由によって義務教育の理念が妨げられていたことがわかる2。そのような長期欠席生徒または義務教育未修了者を救済する措置として生まれたのが夜間中学校であった。すなわち、それらの生徒に対して義務教育を保障する場として中学校夜間学級(以下、夜間学級とする)が誕生した。夜間学級は、1947年に、大阪市で初めて設置されてから、日本の各地で設置されるようになる。東京都では、1951年に初めて足立区立第四中学校に併設され、それ以降、表1の通り、立川市、八王子市、■飾区、墨田区、大田区、世田谷区、荒川区の順に公立の中学校に夜間学級が併設されている。戦前から人口の過密化が進み、中小の零細企業が密集する荒川区では、やはり終戦後には新制中学校の長期欠席生徒や未修了者が多かった。東京都教育委員会の「昭和30年度長期欠席児童生徒調査報告書」によると、同年度の都内23区における中学校生徒の長期欠席者が最も多かったのは足立区で、その次が荒川区であった3。本論文では、東京都で夜間学級が設置された背景を確認し、荒川区立第九中学校夜間学級(以下、荒川九中夜間部とする)の事例を詳しく分析する。具体的には、荒川九中夜間部が設置された経緯、設置するにあたり尽力した人々を確認し、同夜間部の初期の生徒の状況、教職員の体制、教育の実態などを明らかにする。なお、一定期間の傾向を把握するため、分析の対象時期は、荒川九中夜間部が設置された1957年から1961年頃までとする。先行研究に目を転じると、夜間中学校に関する研究は多岐にわたり4、荒川九中夜間部もその研究対象となっている。荒川区の歴史に関しても、区史、区教育史、区議会史など豊富に刊行されている。しかし、いずれの研究においても荒川九中夜間部の設置経緯及び初期の実態が体系的142順番市区町村足立区立川市八王子市■飾区墨田区大田区世田谷区荒川区出典:各学校の沿革史を参考にして筆者が作成した。これらの夜間学級は、長期欠席生徒が多い地域を中心に設置されており、特に中・小零細企業が密集している工業地帯は長期欠席者の割合が高い傾向があったため、夜間中学校は足立区、■飾区、墨田区、荒川区などに集中した。夜間学級設置年月1951年7月1952年5月1952年5月1953年4月1953年5月1953年9月1954年5月1957年2月備 考1961年廃止1950年に校名変更表1 東京都の夜間学級設置中学校学校名学校設立年月1947年4月1951年4月1947年4月1947年4月1947年4月1953年6月1948年4月1953年3月第四中学校第三中学校第五中学校双葉中学校曳船中学校糀谷中学校新星中学校第九中学校
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