早稲田教育評論 第36号第1号
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南京国民政府時期(1927〜1949)における民衆教育館の展開 ─徐州民衆教育館の取り組みを中心に─表2 江蘇省立民衆教育館の組織体制(1933年)図1 徐州民衆教育館組織体制図部署の設置を規定した16。しかしこの規程には強制力がなかったため、1933年の江蘇省立民衆教育館においては規程通りに設けられた組織体制は一つもなく、民衆教育館ごとに独自の展開が見られた(表2)。1932年から1937年の間、徐州民教館は基本的に表2のように総務部(内部運営)、教導部(国語教育と公民訓練)、生計部(生計教育)という3つの部署を軸にして事業を展開したが、部署の調整が頻繁に見られた。例えば、図1のように徐州民教館は設立当初、国民党が一時的に提起した革命思想を消失させるという教育理念に基づいて特種委員会を設置した(左)。しかしこの組織は一年も持たず、1933年前半はすでになかった(右)。同時に、各部署内部の事業も頻繁に変動した。例えば、生計部の事業は1932年の農業推広股、農事実験股、工芸指導股から1933年の統計股、購置股、推広股、調査股と変更され、その後も2回の調整が行われた。殆どの調整は国民政府の政策転換や経費不足などの現実問題、あるいは教育方法・内容の不備といった理由によるものである。このように組織は臨機応変に運営することは、事業の継続や組織の安定に関して悪影響を生じていたとも考えられる。江蘇省立南京民衆教育館総務部 科学部 芸術部 教導部 図書部 研究部江蘇省立鎮江民衆教育館総務部 展覧部 教導部 推広委員会 都市実験区 郷村実験区 農芸試験場江蘇省立徐州民衆教育館総務部 教導部 生計部 実験部 研究委員会江蘇省立兪塘民衆教育館総務部 生計部 訓練部 輔導部江蘇省立湯山民衆教育館教学部 社会部 生計部 輔導部 事務部無錫南門実験民衆教育館総務部 労工教育部 市民教育部 棚戸教育部出典:邵暁堡「省立民衆教育館之組織与設施的商榷」17より 筆者作成   出典:「本館籌備進行概況」18より 筆者作成127

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