早稲田教育評論 第36号第1号
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(Akatsuka, 2021より作成)EricksonCosta and KallickGardner人 物Wiggins and McTighe出版年20056以上14個の教育学諸理論・哲学のうち、IBプログラム内で批判的思考モデルの核として採用されているものはどれだろうか。それを明らかするためには、IBプログラムで用いられている、ユニットプランナー(Unit Planner)と呼ばれる単元の指導計画の構成を検討することに加え、国際バカロレア機構が認証する教材の構成について、その特徴を検討する必要がある。ユニットプランナーとは、IBプログラムにおいて採用されている教育学諸理論や哲学を踏まえた上で、授業でそれらをどう具現化していくのかを示す単元ごとの指導計画である。表5は、DPで用いられているユニットプランナーの構成と内容を整理したものである。なお、項目番号は配列の順番を示している。ユニットプランナーのテンプレートは、IB実施校向けに限定的に公開しているという事情から、本稿では、第1著者が訪問したIB実施校から提供を受けた書き込み済みのユニットプランナーの実物3点を基に、内容を整理した。200820092011早稲田教育評論 第 36 巻第1号逆向き設計:本質的な問いを設定し、目標や基準の設定からカリキュラム設計を始め、その後に評価指標を定めるなど、指導を行った後で考えられがちな項目を先に決定していくことから、逆向き設計と呼ばれる。概念型学習:知識に関する問い、概念理解を深める問い、議論を促す問い、といった3つのタイプの問いを投げかけることで、生徒の批判的思考を高めることができると主張する。思考の習慣(Habits of Mind):実生活でよりよく生きていくために必要な16の思考態度を示した。多重知能:多重知能と批判的思考の関係性を明らかにした。理論的な枠組みとその特徴IBのユニットプランナーの構成について、日本の学習指導要領の構成との類似点や相違点に着目して分析を行った久保田(2020)は、「『逆向き設計』(Wiggins & McTighe, 2005)の要素を取り入れて作成されている」(p. 39)とし、「単元単位で逆向き設計を進めるために IBが準備した、単元設計ツールである」(p. 39)と結論付けている。半田(2020)は、DPにおける言語科目について、その指導上の特徴を考察し、「教師は授業を計画し実施する際に、必ず『概念』学習を念頭に置かなければならないということである」(p. 15)と指摘する。加えて、中村(2019)は、各IBプログラムにおける言語科目のカリキュラム分析を行い、エリクソンが提唱する概念型学習を軸としながら単元が設計されていることを指摘し、「発達段階に応じた『概念』項目の配置の仕方と授業設計の方略」(p. 29)がなされていると結論付けている。これらから、IBプログラムでは、ウィギンズ・マクタイの逆向き設計論やエリクソンが提唱する概念型学習が単元設計上の軸となっていることが示唆される。では、IBのユニットプランナーでは、これら2つの理論はどのように位置づけられているのだろうか。

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